高齢者に多い疾患 認知症⑨

認知症の症状、中核症状と周辺症状
認知症の症状は、中核症状と、周辺症状に分けられます。中核症状は、脳の認知機能が障害されることにより引き起こされる症状で、最近の出来事を思い出すことが不得意になります。
それに対して周辺症状は、周囲の関わりや環境が影響して起こる症状です。興奮、暴力、妄想などの認知症に伴う行動と精神の症状でBPSDとも呼ばれます。
認知症が進むと、認知機能が低下し、同じ質問を何度も繰り返すことが多くなります。家族や周囲の人はうんざりするかもしれません。しかし、本人にとっては「初めて聞くこと」なので、家族が「なぜうんざりしているのか」理解できず困惑してしまいます。
また、急に怒りっぽくなったり、家族を泥棒扱いするなど、周囲の人を困惑させる行動を起こすこともあります。家族にとっては、認知症になる前の元気な姿を知っているだけに、「なぜ?」「一生懸命介護しているのに?」と腹が立つことでしょう。しかし、認知症である本人は、以前のようにできない場面が多くなり「昔のようにできない」、「自分自身がどうしてよいのかわからない」と感じているのです。
まずは、「認知症は病気である」ことを十分理解し、その知識を基に本人の気持ちに寄り添った対応を心掛けることで、より良い関係を保つことができるのです。

代表的な、症状別対応法
ここからは、認知症の代表的な症状の対応方法をご紹介します。しかし、認知症ご本人と家族の置かれている状況は様々で、数学のように答えは一つではありません。ご紹介する方法を参考に工夫をして見て下さい。

■ごはんを食べていないという
記憶障害により「食べたことを忘れている」場合と、満腹中枢に障害が及んで、満腹感が得られないなどが考えられます。
「今食べたでしょ」などと否定すると「食事を摂らせてくらない」という不信感にもつながります。食事をしたいという本人の気持ちを尊重し「今、準備するから少し待っててね」などと答えてみましょう。それでも食事をしたいと訴えてくるようであれば、「これを食べて待っていて下さい」と少量のお菓子などを渡すこともようでしょう。
また1度の食事の量を減らし、数回に分けて食事を摂るような工夫をしてみることもよいでしょう。

■財布を盗まれたと言って大騒ぎをする(物盗られ妄想)
財布に関わらず、大切なものを盗まれたと思い込む症状を「物盗られもうそう」と言います。決まって疑われるのは、一番身近にいる家族です。「私が盗むはずはないでしょ!」「ちゃんと探したの」と否定するとますます大騒ぎになります。
本人は大切な物を盗まれたと思っているのです。「一緒に探しましょう」と言って、見つけたら一緒に喜びましょう。ただし、家族が先に見つけてしまうと、「やっぱり盗んだ犯人だったのでは」とさらに疑いかねません。家族が先に見付けたら、本人が見付けられるように誘導しましょう。

■すぐに外出してしまい、道に迷う(徘徊)
家族にしてみれば勝手に外出しているとしか思えませんが、本人なりの理由があるようです。例えば、本人が自宅(生家)に帰ろうとしている場合は「今日は日曜日ですよ」と声をかけるのもいいでしょう。
徘徊が多い方には、名前や連絡先を書いた名札を、衣類や持ち物につけておくことや、靴の側面に電話番号などを明記しておくことをおすすめします。また、本人が出かけるときに一緒に行き、よく通る道や場所を把握して、近隣の人に声をかけておくことも大切です。

■夜、眠らずに行動する(昼夜逆転・不眠)
認知症になると、見当識障害により昼夜や時間の判別がつきにくくなります。朝・昼・夜の区別が付きやすいように、生活リズムをつくり、メリハリのある生活を送ることが必要です。例えば、朝は決まった時間に起きてもらい、日中は散歩や日光浴をしたり、デイサービスに通ってもらうなど適度に身体を動かしてもらいましょう。
夜は決まった時間に床に入り、気持ちよく眠りに付けるよう温度管理にも気をつけましょう。
これらの工夫をしても症状が改善しない場合には、専門医に相談下さい。

■トイレの場所がわからない、排泄の失敗が増えた
認知症の症状が進んでくると、尿意があってもトイレの場所を探しているうちに間に合わなくなり失敗してしまう場合があります。「ここはトイレではない」と伝えても事態は変わりません。トイレがどこにあるのか解るように、ドアを開けっ放しにする。トイレのドアに「トイレ」と書いた紙を貼っておくのも効果的です。
認知症高齢者に多い機能性尿失禁や切迫性尿失禁の場合は、本人に尿意がなくても、時間を決めてトイレに誘導しましょう。

■突然興奮したり、騒いだりする(せん妄)
突然怒りっぽくなったり、興奮して歩き回ったりする場合は「せん妄」が起きていることも考えられます。力で抑えつけようとしたり、怒鳴ったりしも効果はありません。しばらくは様子を見て、落ち着いてきたらさりげなく家族が見守っていることを伝えましょう。
「せん妄」が起きない方でも、ちょっとしたことで暴力をふるう場合もあります。本人がどのような状況時に暴力をふるうのか見極めて下さい。ちょっとしたことが、本人にとっては嫌な気分になっているのかもしれません。その気持ちがうまく伝えられずいら立っているのかもしれません。本人の嫌がることは無理強いせず、本人の意思を尊重するよに心がけましょう。

認知症の介護のポイント
認知症になるともの忘れや判断力が低下します。介護する私たちには計り知れない行動に見えても、本人にとっては意味があることが多いのです。
毎日トイレットペーパーを台所で洗おうとする方がいました。よく訳を伺ってみると、海で採ったワカメを洗っていたというのです。以前この方は、ワカメの加工工場で働いていました。このように、周辺症状は、ご本人の人生と密接な関係があります。本人のことをよく知り、その方にあった接し方が大切になります。
頭ごなしに叱ったり、間違いを指摘しても、理解してもらえないどころか、ますます症状は悪化します。つまり、認知症の人を叱っても意味がないということです。認知症の人には認知症の人の世界があります。介護する側はそれを理解し、安心して納得してもらえるように接することで、介護する側も楽になるでしょう。
そして、認知症により知能機能は低下しても、人としての感情、思い、プライドは残っています。残っている感情に配慮することが認知症の介護には大切なことなのです。

サポートを上手に活用し、一人で抱え込まない
認知症の本人はもちろんですが、介護する家族も大変です。介護保険のサービスを上手に利用しましょう。また、介護のことを相談できる人や愚痴を言い合える仲間を持つことも大切です。困った時に相談できるところがあれば、よい方法が見つかることもあります。「一人で抱えこまない」ために、家族の会や集いに参加するのもよいでしょう。

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