STOP 寝たきり。長期臥床が引き起こす、廃用性症候群。まずは、座ることからはじめましょう。

動かない状態が続いた結果、心身の機能が低下して起こる廃用性症候群

 東日本大震災で生活が一変した被災地で仮設住宅での生活を余儀なくされている高齢者の方々に、運動不足などが原因で心身の機能が低下する「生活不活発病」が増加しています。
 被災により仕事や趣味など体を動かす機会が減ったためで、みなし仮設住宅で生活する65歳以上の高齢者の48%が震災後歩行困難になったと、仙台市医師会と国立長寿医療研究センターの調査で発表されています。
 「生活不活発病」とは、過度に安静にすることや、「動かない」などの状態が続いた結果、生活が不活発化となり心身の機能が低下し「動けない」状況に陥ることで、学術的には「廃用性症候群」と言います。
 インフルエンザンなどで1週間ほど寝込んだ後、起き上がろうとするとふらつく、体がだるくて辛いといった経験をされた方も多いと思います。例えば健康な人でもベッドで安静臥床を続けていると、下肢の筋力は1週間で20%も低下すると言われています。
 1日安静にしていたことで生じた機能低下を回復させるには数日かかり、1週間安静にしていた場合、低下していた機能を回復するには1ヶ月ほどの時間がかかるようです。特に高齢者の場合、廃用性症候群を起こしやすく、若い人達に比べ機能回復までには時間がかかってしまうため、気が付いた時には「起きられない」「歩くことができない」などの状況になることもあります。
 人間は持っている機能を使わないと、その機能は低下します。過度に安静にしていたことや、病気やけがが原因で長期臥床を余儀なくされたとします。すると、活動性が低下→下肢の筋力が低下し歩行困難→生活はさらに不活発になる→筋力低下は進行し、意欲の低下などの精神的機能も低下するという、廃用性症候群の悪循環に陥り、最終的には寝たきり状態になってしまうという危険性もあります。

「寝かせきり」が引き起こす「寝たきり」の状況

 日本には寝たきりの高齢者が非常に多いと言われます。しかし、日本の寝たきり高齢者は、ほったらかしにされているわけではないのです。転倒が心配なので歩かないでほしい…風邪をひいたら大変だから外出はしてほしくない…自分(介護する人)がやってしまったほうが早いし安全だから・・・など、親孝行の気持ちもあって、なにもかも一生懸命お世話をしてしまっている結果「寝かせきり」の状況を作りだしてしまっているのです。
 当然寝たきりの状況が多くなると、メリハリもなく、脳を使わない生活を送ることにもなります。次第に筋肉は衰え、活性化しなくなった脳は、そのまま萎縮し認知症にもなりかねません。まさしく廃用性症候群の始まりです。

「寝たきり」を防ぐには、まずはベッドの上で座ることからはじめましょう

 廃用性症候群を防ぐには、「寝たきり」の状態にしないことです。「寝たきり」を防ぐには、まずベッドの上で座ることから始めましょう。座ることで、視野が広がり目から入る刺激が増え、意欲がわいてきます。また、座ることで姿勢を保つ筋力がついたり、床ずれの防止や便秘の解消にも役立ちます。
 ただし、「寝たきり」の状態が長い間続いていた方は、起立性低血圧を起こしやすくなっています。長期間寝ていたことにより、血圧を調整する機能が低下してしまい、体を急に起こすことで、血流が下半身に下がって、脳の血流が少なくなり、めまいや吐き気、脈が弱くなるなどの症状を起こすのです。
 まずは、10分程度、体を起こした状態にしてあげることから始めましょう(起立性低血圧の症状が現れた場合には中止します)。リクライニングベッドがある場合は、角度を30度、60度、90度と上げて体を慣らしていきます。リクライニングベッドがない場合には、背中に枕や丸めた毛布などを挟んで上半身を起こした状態にしましょう。
 体を起こすことに慣れてきたら、30分程度体を起こしてテレビなどを見るのもいいですね、自然と腹筋や背筋がついてきます。また、少し前かがみの状態になることで誤嚥性肺炎の予防にもつながりますし、食欲も湧いてきます。
 次の段階ではベッドから足を降ろして座ることに挑戦です。足を床につけて踏ん張ることで座位が安定しますので、足が床にしっかりとつくよう、ベッドの高さを調整します。床まで足が届かない場合には、足台を使います。車いすに移乗できるようになったら、お食事はテーブルでいただきましょう。これで活動範囲がぐっと広がります。
 これからの季節、ひなたぼっこを兼ねて、窓際に座って外の様子を眺めるもよし、お天気の穏やかに日には、お散歩も楽しみましょう。
 ただし、起立性低血圧は、重症になると意識喪失を起こすことがあります。長期間寝たきりの方の場合、理学療法士や訪問看護師、保健師等にご相談下さい。

廃用性症候群を予防する

 廃用性症候群は予防することが何よりも大切で、もしその兆候が表れた場合は、できるだけ早く気付いて悪循環を断ち切らなくてはなりません。
 ベッドから動くことができなくても、気分がよいときに寝たまま足を回す、手や足先をもみほぐす、軽くマッサージをする、体を起こして同じ姿勢を続けないようにするなど、とにかく体を動かすことが予防につながります。人との関わりを多く持つことも予防につながりますので、入院中はなるべく面会に行き、いろいろな話をするといった精神的ケアも心がけたいものです。
 もう一つ大切なことは、日常生活での活動性を向上させることです。自分でできることは自分で行いましょう。趣味や簡単な家事などできることは積極的に行うことが、生活全般の活発化に広がります。
 介護する側の人は、お世話してあげたい気持ちをぐっとこらえて見守ることに徹して下さい。自分でできることを行うことが、生活リハビリにつながります。

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