脚の表面に浮き出る下肢静脈瘤 女性は男性の3倍も罹りやすい

下肢の静脈を流れる血液は重力に逆らって心臓へと戻る
その名前の通り、静脈がコブのように膨らんだ状態になる下肢静脈瘤。脚のだるさやむくみ、痛み、かゆみ、そしてこむら返りが起こりやすくなるなど、日常生活に支障を来すこともあるため、気になる場合は皮膚科や外科の専門医を受診するとよいでしょう。
 なぜ脚にこのような症状が現れるのか。それは、脚が心臓から遠い位置にあり、人間が立ち上がり、二足歩行をするようになったことが関係しています。
 人間の血管には動脈と静脈の2種類があり、動脈は心臓の鼓動に応じて押し出された血液を全身に届けています。脈を測るときに動脈を触れるのも、弾力性に富んだ動脈がドクドクと力強く脈打っているためです。
 一方静脈は、心臓が血液を吸引するわずかな力で血液を押し戻しているだけです。また、呼吸することや運動して筋肉を動かすことが静脈にとっての圧力になり、血流が助けられています。もちろん、心臓よりも高い位置にある静脈の血液は、重力によってスムーズに心臓まで戻ることができます。一方、心臓からもっとも遠く、下の方にある脚の静脈の血液が心臓まで戻るためには、重力に逆らって上へ上へと上ってゆく必要があります。
 しかし、脚には心臓のポンプ機能のように、血液の流れを生み出す力はありません。放っておけば、静脈の血液はどんどん下に下がっていくことになります。そう知って納得!介護予防ならないために静脈に備わっている機能が、血液の逆流を防止するための静脈弁です。
長年の立ち仕事や加齢などで脚の静脈弁が壊れやすくなる
 静脈弁は、脚の静脈には無数にあって非常に発達していますが、頭部や肺などの静脈にはほとんどありません。脚の静脈では静脈弁の働きにより、脚先から上へと上る血液は、再び下へと流れていかないようになっているのです。
 ところが、この大切な静脈弁が壊れてしまうことがあります。例えば、立ち仕事が多い人です。長時間立ったままの姿勢でいると、脚には血液が滞りやすくなります。美容師やバスガイド、受付業務などで長年立ち仕事に就いていた人は、脚の静脈に血液が溜まりやすく、静脈弁にも大きな負担をかけていたことになります。また、妊娠によって、子宮が大きくなることで下肢の静脈の血流が滞りやすくなったり、ホルモンの影響で静脈弁が脆くなったりすることも静脈瘤の原因のひとつです。
 そして、加齢に伴い静脈弁が脆くなり、壊れてしまうこともあります。静脈弁が壊れると、脚の血液は心臓へと戻りにくく、常に滞った状態になります。そして静脈には動脈のような弾力がないので、血液が溜まることで血管がどんどん伸びていき、曲がったり膨れるなどして静脈瘤ができるのです。
 患者は女性に多く、男性の2倍から3倍と考えられています。また、家族に静脈瘤の人がいる場合にも発症しやすく、遺伝の要素もあると言われています。その他、長期間にわたり肥満の状態が続いている人も、静脈の血液循環が悪くなる傾向にあり、下肢静脈瘤を発症しやすくなります。
 下肢静脈瘤には、見た目の変化以外には何も症状が起こらないこともあります。しかし、血流が滞ることで脚に重いだるさが続いたり、脚全体が腫れたり、かゆみや痛みなどが起こることもあります。また、皮膚の色素沈着や発疹の他、夜間にこむら返りが生じやすくなることもあります。こむら返りは筋肉疲労の蓄積によって起こると言われますが、下肢静脈瘤の場合、日中の活動によって生じた老廃物が静脈血の中に留まることで、脚の筋肉の興奮状態が続き、こむら返りが起きやすくなるということです。
でこぼこが現れず血管が透けて見える下肢静脈瘤も下肢静脈瘤は、4つのタイプに分けられます。
 まず、下肢静脈瘤の中でもっとも多いタイプが、でこぼことした大きな瘤が目立つ「伏在静脈瘤」です。大伏在静脈瘤と小伏在静脈瘤の2種類があり、前者は足のつけ根から伸びる、太い大伏在静脈の静脈弁が壊れることで起こります。膝やふくらはぎの内側側面、あるいはスネなどに太く広範囲にわたる瘤が現れます。後者は、膝の後ろにある小伏在静脈の弁が壊れることで起こり、ふくらはぎに比較的細い静脈瘤が現れます。
 伏在静脈瘤では、脚のだるさなどの症状が多く現れ、進行すると脚全体の血流が悪くなり、皮膚の炎症を招くこともあります。そのため、手術による治療が必要になることも少なくありません。伏在静脈から枝分かれした細い血管に起こるのが「側枝静脈瘤」です。膝下に見られることが多く、伏在静脈瘤よりも細く小さな瘤が特徴です。
 でこぼこの瘤が目立たない下肢静脈瘤もあります。「網目状静脈瘤」は、ごく細い静脈が拡張して、皮膚の上から青黒い網目状の血管がくっきりと見えます。主に膝裏に多く見られます。そして、「クモの巣状静脈瘤」は、その名前の通り、血管がクモの巣のように透けて見えます。皮膚の浅いところを通る毛細血管で血液が滞り、細かく放射線状に浮き出て見え、網目状静脈瘤と比較して赤みが強いのが特徴です。
手術の他、弾性ストッキングで症状を進行させない方法も
 重度の伏在静脈瘤を除き、下肢静脈瘤は症状がなければ治療の緊急性はありません。しかし、皮膚にかゆみや不快感があり、かきむしることで蜂窩織炎などの化膿性炎症を起こしたり、潰瘍ができたりすることもあります。また、見た目が気になり、外出の機会が減少して家にこもりがちになるような場合は、治療をおすすめします。
 下肢静脈瘤の治療にはいくつかの方法があります。症状の重い伏在静脈瘤の治療方法として一般的なのが、「ストリッピング手術」です。血管の中にワイヤーを通し、瘤がある静脈を引き抜いてしまう手術です。多くは半身麻酔か全身麻酔で行われる、大掛かりな手術と言えます。
 クモの巣状静脈瘤など比較的細い静脈瘤に対して行われるのが「硬化療法」です。静脈の内部に硬化剤と呼ばれる薬剤を注入し、血管を塞いで静脈瘤を消し去る方法です。最近では、皮膚の表面や血管の内部にレーザーを照射し、瘤を収縮させたり血管を塞いだりする治療法も行われています。
 手術は行わず、伸縮性の強い医療用弾性ストッキングを着用することで、膨らんだ血管を圧迫して血液の滞留を防ぐ圧迫療法もあります。ただし、この治療は下肢静脈瘤の進行防止が目的で、下肢静脈瘤そのものを治すことはできません。
 下肢静脈瘤は予防するのが難しい病気ですが、肥満を解消して血行を良くしておくことは予防のためにもおすすめです。また、ふくらはぎの筋肉を鍛えて静脈血の戻りを助けたり、立ちっぱなしにならないようこまめにストレッチ運動を行ったり、就寝時には脚を高くして寝るなどの工夫も有効でとなります。

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