暴飲暴食が招く膵炎は生活習慣の見直しが予防の鍵

胃腸に比べると馴染みの薄い膵臓(すいぞう)の役割とは
 食生活の欧米化がリスクを高める一端となっている膵炎。厚生労働省の調査によると、慢性膵炎では1年間でおよそ4万5,000人の患者さんが病院を受診しています。最悪の場合、命に関わる危険もある重症急性膵炎も、およそ5,000人が発症していると言います。そして患者数は男性が女性の4倍で、中高年以降に発症することが多いという特徴もあります。
 胃や腸と比べるとあまり馴染みのない膵臓は、胃のちょうど裏側にあり、20㎝ほどの細長い形をしています。その働きでとくに重要なのが、血糖値をコントロールするインスリンというホルモンを分泌することです。膵臓の中にはランゲルハンス島と呼ばれる細胞の集まりがあり、その中のベータ細胞でホルモンは作られています。
 インスリンには、食事によって摂取し血液中に溶け込んだブドウ糖を細胞に取り込ませる働きがあります。また、ブドウ糖をグリコーゲンという物質に作り変えて筋肉や肝臓などに蓄えたり、余分なブドウ糖を脂肪組織に蓄えるなど、血液中のブドウ糖を速やかに処理して血糖値を一定に保つ役割を担っています。もしもインスリンが分泌されないと、血糖値が高い状態がいつまでも続き、いわゆる糖尿病につながります。
 さらに、膵臓のランゲルハンス島にはグルカゴンという物質を作り出すアル知って納得!介護予防ファ細胞もあります。血液中のブドウ糖の量が極めて低い低血糖の状態が続くと、冷や汗や動悸などの症状の他、意識障害も起こりますが、グルカゴンにはインスリンとは逆に、肝臓に蓄えられたグリコーゲンをブドウ糖に戻して全身に供給するなどの働きがあります。つまり膵臓には、血液中のブドウ糖をバランスよく調整するという重要な役割があるわけです。
自身が分泌する消化酵素で膵臓が溶ける!?
 さらに、膵臓では膵液と呼ばれる消化酵素が分泌され、十二指腸に運ばれて糖質や脂質、タンパク質を消化分解したり、胃液で酸性になった食べ物を中和するなどの働きをします。膵液の消化作用は非常に強力ですが、健康な人の場合、その消化酵素によって自分の膵臓が溶けてしまわないよう、とても繊細な仕組みが働いています。
 たとえば、タンパク質を分解するのは膵液の中のトリプシンという酵素ですが、膵臓内ではトリプシノーゲンという未熟な形で作られ、その働きを発揮しません。しかし、これが十二指腸に運ばれると、そこでエンテロキナーゼという酵素と合わさり、初めてトリプシンに変化し、消化酵素として力を発揮するのです。
 ところが、お酒の飲み過ぎや脂っこい料理の食べ過ぎ、あるいは胆石などが引き金となり、消化酵素が膵臓内で過剰に分泌して活性化することがあります。すると、膵臓は自分で分泌した膵液によって消化されてしまいます。これが、激痛を伴う急性膵炎と呼ばれる病気です。
 急性膵炎で最も多い症状は、みぞおちから肋骨の下あたりにかけての、上腹部痛です。また、背中が痛むこともあります。多くの場合、じっとしていられないほどの激痛が起こります。〝焼けるような?〝のた打ち回るほどの?と表現されるほど強い痛みですが、膝を曲げて腹ばいになる胸膝位という体勢をとると症状が和らぐこともあります。
 その他、吐き気や嘔吐、38度程度の発熱、腹部膨満感などが起こることもあります。膵液が膵臓の細胞を壊すだけでなく、周囲の臓器まで消化するなど、全身に炎症が及ぶ状態を重症急性膵炎といい、黄疸や呼吸困難、ショック状態などが起こります。
症状が現れにくい慢性膵炎は膵臓の組織が線維化する
 急性膵炎の症状は恐ろしいものですが、多くの場合で激痛が起こるため、放置する患者さんも少なく、早めの治療を受けることが可能です。
 一方で、痛みが軽くすぐに治まる慢性膵炎には、より注意が必要です。ごく小さな急性膵炎が起こっては治るなどを繰り返し、炎症が持続して起こり、長い間に膵臓の組織が少しずつ破壊されて線維化する病気です。最初のうちは上腹部の痛みも少なく、すぐに治るために、市販の胃痛薬などを飲むだけで放置されがちです。
 また、膵炎を知っていても、痛みがしばらく現れないことで治ったと勘違いする人もいますが、実はそうではありません。膵臓の組織が線維化した結果、膵液の分泌量が減少して痛みが現れにくくなるのです。やがて、膵臓が機能不全を起こし、食べ物が消化できなくなります。体重が徐々に減少し、やがて消化されない脂肪が便と一緒にドロドロの状態で排出される脂肪便が見られるようになります。また、インスリンの分泌も低下するため、糖尿病を発症しやすくなります。
 もし、毎日お酒をたくさん飲む習慣があり、脂っこい食事をした後に上腹部や背中に鈍い痛みを感じることがあれば、自己流の対処で済ませるのではなく、早めに消化器内科などの専門医を受診することをおすすめします。一度線維化した膵臓の組織は元には戻りませんが、消化酵素薬やインスリン注射などの薬物療法も可能です。急性膵炎では絶飲絶食による膵臓の安静ののち、消化酵素の活性を抑えるタンパク分解酵素阻害薬などで治療を行います。
暴飲暴食を控えて膵臓を労わる生活を
 膵炎を予防するには、生活習慣を正すことが不可欠です。
 まずは、飲酒習慣の見直しです。アルコールの悪影響といえば真っ先に肝臓を思い浮かべますが、膵臓にも大きな負担となります。慢性膵炎の場合、一般的にはビールなら大瓶3本、日本酒なら3合に相当するアルコールをほぼ毎日飲み続けると、10~15年で発症する可能性が高くなると言われています。ただし、体質などの個人差があるため、これより少ない飲酒でも膵臓を傷める可能性は十分にあります。
 また、脂肪分の多い食事にも注意が必要です。揚げ物やステーキなどをたくさん食べたり、デザートにケーキやアイスクリームを食べた直後に急性膵炎を発症するというケースもあります。動物性脂肪の多量摂取は、膵臓に大きな負担をかけます。野菜中心のメニューで低脂肪を心がけることが大切ですが、どうしても脂っこいメニューが食べたいなら、一度にたくさん食べるのではなく、1日の中で何度かに分けて、少しずつ食べるようにしたいものです。
 膵臓の病気では、高齢者に多い膵臓がんも要注意です。膵臓がんは40歳未満で発症することは稀で、60~70歳で最も多くなります。膵臓がんに罹りやすい人としては、家族に膵臓がん患者がいるという遺伝的要素も挙げられますが、糖尿病や胆石、急性膵炎、慢性膵炎に罹ったことがある人にリスクが高まるというデータもあります。
 膵臓がんも慢性膵炎同様に初期ではほとんど自覚症状がないため、高リスク群の人は定期的な検診が望ましいと言えます。

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