高齢者に増加する慢性腎臓病は定期検査による早期発見を


成人の8人に1人が罹かる新たな国民病
 腎臓は、血液の中の老廃物をろ過し、尿として体の外へ排出させて血液をきれいにするという大切な機能を持っています。また、尿の濃度や量を調節することで体内の水分やミネラルのバランスを保ったり、血圧を調整するホルモンを作ったり、赤血球を作るために必要なホルモンを作るなど、様々な働きがあります。
 腎臓は背中側の腰骨の上あたりに左右並んで2つあり、ひとつの大きさは150gほどと小さな臓器ですが、私たちの体の機能を正常に保つためにとても重要な役割を担っているわけです。
 このように大切な腎臓の機能が慢性的に低下することで、体のあちこちに様々な症状が起こるCKDは、2002年にアメリカで提唱された比較的新しい病気です。CKDになる原因には、炎症や感染などによって起こる腎炎も挙げられますが、近年では高血圧や糖尿病、脂質代謝異常や肥満など、生活習慣病が原因となることが増えています。
 日本では、およそ1,330万人、成人の8人に1人もの割合でCKD患者がいると推計されていますが、生活習慣病は年を取るほど増え、また腎臓の機能も加齢に伴って低下していくことから、CKDの患者は高齢になるほど増加していくと考えられます。日本腎臓学会によれば、歳以上では男性の%、女性の%がCKDに罹っているということです。もはや、国民病のひとつと言えるでしょう。
 CKDを放っておくと、やがて透析が必要な腎不全にまで進行する場合があります。また、CKDに罹っている人は高血圧や糖尿病などを合併していることが多く、動脈硬化が進みやすい状態と言えます。心筋梗塞などの心疾患や脳梗塞などの脳血管疾患のリスクも、健康な人と比べて3倍も高くなることが分かってきました。

血液検査や尿検査で定期的に腎臓の状態を調べる
 放っておくと様々な怖い病気のリスクを高めるCKDですが、実は初期段階では自覚症状がほとんどありません。これが、CKDの患者を増加させている原因とも言えます。
 CKDがある程度進行すると、いくつかの症状が表れます。例えば、常につけていた指輪やいつも履いている靴が、きつく感じられるようになることが挙げられます。腎臓機能の低下によって、むくみが生じるためです。また、疲れやすく、いつも倦怠感があって、少し動いただけで息切れがするなどの症状も出てきます。夜間に何度もトイレに行きたくなったり、貧血が起こることもあります。高齢者の場合、これらは年齢のせいだと見過ごされやすい変化ですが、異変を感じたらできるだけ早めに専門医または主治医に相談した方が良いでしょう。
 ただし、これらの症状を感じたときには、すでにCKDがかなり進行している段階です。そして、腎臓の機能はある程度まで低下してしまうと、もとの健康な状態にまで回復させるのはとても難しくなります。薬物治療などによって、それ以上悪くならないように進行を食い止めるしかありません。
 そのため、CKDは早期発見が不可欠です。初期段階では自覚症状がないため、定期的に健康診断を受け、血液や尿の検査をすることが大切です。
 血液検査では、血清クレアチニンの値を調べます。これは、血液中にある老廃物の一種で、健康な状態であれば尿中へと排出されますが、腎臓の機能が低下すると血液の中に溜まっていきます。血清クレアチニンの値が高いということは、腎臓のろ過機能が正常に働いていないと判断ができます。
 また、腎臓機能が低下していると血液中のたんぱく質が尿に漏れ出すため、尿検査によって尿たんぱくの値を調べることでも腎臓の状態が分かります。ただし、風邪による発熱や激しい運動をした後などにも異常な値が出る場合があるため、1度検出されたら必ず2〜3度繰り返して検査を受けて確認する必要があります。日本腎臓学会のCKD診療ガイドでは、血清クレアチニンと尿たんぱくの両方またはいずれかの異常が、3ヶ月以上続いている状態がCKDとされています。

薬物療法によって低下した腎臓機能を補う
 CKDの治療では、主に薬物療法によって進行を遅らせたり、腎臓の機能が低下することで起きる症状を改善していきます。
 血液中の老廃物を排出する機能が低下すると、体内に溜まって尿毒症になるため、これを補うために経口吸着炭素製
剤が用いられます。腸の中で老廃物を吸着し、便とともに排泄させる薬です。
 腎臓は血液の材料である赤血球を作るホルモンを分泌しますが、CKDになるとこの働きが低下して貧血になります。そのため、エリスロポエチン製剤などのホルモン注射によって貧血の改善を図ります。貧血を治療することは、腎臓機能の低下を食い止めるのに役立つと言われています。また、貧血は心臓に大きな負担となって心不全のリスクを高める原因にもなるため、CKDの治療には貧血の改善が非常に大切です。
 腎臓機能が低下すると、カルシウムの吸収が弱くなって骨がもろくなり、骨粗鬆症を進行させることがあります。これは、カルシウムの吸収に不可欠な活性型ビタミンDを、腎臓が作っているためです。そこで、活性型ビタミンD製剤でこれを補い、骨がもろくなるのを防ぎます。
 他にも、体内の余分な水分やナトリウムの排出を助けて血圧を下げ、むくみの改善にも役立つ利尿薬や、体内のミネラルバランスを整えるカリウム吸着薬やリン吸着薬などが治療に用いられます。

節塩や節酒、禁煙を心掛け腎臓を守る生活を
 CKDは、定期的な検査によって早期発見と早期治療を心掛けることが大切です。とはいえ、一度悪くなった腎臓をもとの健康な状態に戻すことはとても難しいため、もっとも大切なのはCKDにならない生活習慣を心がけることです。
 まず、毎日の食事では塩分の取り過ぎを防ぎます。1日の塩分摂取量は6g未満にすることが理想ですが、濃い味付けに慣れている人が急に食事の塩分を減らすことは難しいものです。そこで、減塩調味料を使う他、香辛料の刺激やレモン・酢などの酸味で味付けに工夫をしたり、シソやショウガ、ワサビなどの薬味を利用して減塩による味気なさを補うのが良いでしょう。麺類の汁は飲み干さない、おひたしなどには醤油を直接かけるのではなく小皿に取って付けるなどを心がけるだけでも、減塩に繋がります。
 生活習慣では、禁煙を心掛けること。タバコはCKDの発症や進行に関係していると言われている他、心疾患や脳血管疾患などの危険因子にもなります。適正な体重を維持するため、体力や体調にあわせた適度な運動を行うのも良いでしょう。過度の飲酒もCKDの危険因子となるため、日本酒なら1日1合以下、ビールなら中瓶1本以下などに節酒して、必ず休肝日を作るよう心がけて下さい。
 家族に腎臓疾患を持つ人がいる場合、CKDになるリスクも高まると言われています。今日からでも腎臓を守る食事や生活を心掛け、定期的な検査で早期発見を目指しましょう。

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