たかが貧血と放置は禁物悪性腫瘍や慢性疾患が隠れていることも

高齢者は貧血の自覚症状を感じにくい

長時間立ちっぱなしでいるときや、急に立ち上がった時などに、くらっとめまいを起こす貧血。若い女性に多い病気と思われがちですが、実は高齢者にも非常に多く、また貧血の陰に慢性的な病気が隠れていることもあります。さらに、高齢者の場合は貧血の典型的な症状を自覚しにくく、放置して悪化させてしまうケースも少なくないため注意が必要です。
貧血とは、血液の中のヘモグロビン濃度が低下した状態のことを指します。ヘモグロビンは赤血球の中に含まれている赤い色をした色素で、酸素を体のあちこちに運ぶ働きがあります。つまり、貧血の状態になると、全身への酸素の提供が充分にできなくなるわけです。そのため、めまいや息切れ、疲れやすいなどの症状が現れます。脳にも酸素が行き渡らなくなるため、頭がボーっとしたり、鈍い頭痛なども起こりやすくなります。
ところが、高齢者で、とくに日常生活の活動量が低下している人では、息切れや疲れやすいなどの貧血の症状を自覚しにくいことがあります。また、酸素の不足で頭がボッーとしても、それが加齢にようるものなのか貧血にようるものなかを、家族が見分けることは困難です。”何となく元気がでない””だるさや疲れやすさを訴える”などの症状が長引くようなら、貧血の可能性も考えられることを知っておくとよいでしょう。

消化鎮痛剤の服用が貧血につながることも

高齢者の貧血でとくに多いのが、血液を作る骨髄の働きは正常なものの、鉄が不足することで起こる鉄欠乏性貧血です。鉄は酸素を全身に運ぶヘモグロビンの材料となるもので、鉄が減れば全身に酸素が行き渡らなくなって貧血を起こします。
鉄欠乏性貧血は偏食の若者にも現れますが、高齢者の場合は食事の量自体が少なくなることで鉄の不足が進みます。これを防ぐためには、効率よく鉄分を吸収できるよう、食事のメニューの工夫をすることが必要です。
まず、レバーや赤身の肉、赤身の魚などを毎日の食事に取り入れることです。そして、鉄の吸収を促すビタミンCも一緒に摂ること。ブロッコリーやピーマンを使った料理を添えたり、食後のデザートにみかんなどの柑橘類を食べるのも良いでしょう。胃酸の分泌を促して鉄の吸収を助ける酢の物もおすすめです。
一方、食事中に緑茶を飲むのは避けることです。緑茶に含まれるタンニンという成分は、鉄の吸収を阻害すると言われています。食事中に水分を摂りたいなら、水は白湯、あるいは麦茶やほうじ茶などを選んで下さい。
高齢者の鉄欠乏性貧血では、消化管出血が原因となっていることも少なくありません。胃や腸などの悪性腫瘍から少しずつ出血が続くことで起こることも考えられるため、定期的な健康診断の他、毎日の排便をチェックし、黒色便や血便がでていないかを注意します。
もちろん、消化管出欠のすべてが悪性腫瘍のよるものとは限りません。高齢者では、膝や腰の痛みなどで消化鎮痛剤を服用している人もいますが、これが長期間続くと消化管の粘膜が傷つき、出血に至ることがあるのです。また、血栓をできにくくするワルファリンを服用していると、何らかの理由で消化管に傷が付き出血を起こした場合、じわじわと出血が続き、貧血に至ることも考えられます。
鉄欠乏性貧血では、原因を取り除くとともに、鉄材の服用を続けることで回復が望めます。

腎臓の機能低下で赤血球が作られにくくなる

血液とは無関係に思える、腎臓の機能が低下することで起こる腎性貧血もあります。腎臓は体内の老廃物を濾しとって尿として排出させる働きの他に、体の調子を整えるための様々なホルモンを分泌しています。その一つに、赤血球を作る働きを助けるエリスロポエチンというホルモンがあります。慢性腎臓病などによって腎臓の機能が低下すると、エリスロポエチンの分泌量が減り、赤血球があまり作られなくなって貧血に陥ります。
腎性貧血には、腎臓疾患の治療や食事療法の他、エリスロポエチンの分泌不足を補うために、赤血球造血刺激因子製造によく薬物療法が行われます。早期に腎性貧血の治療を行うことで、腎不全など重篤な症状に進むことを食い止めることも可能であるため、貧血は決して放置してはいけません。
気管支炎や結核、膀胱炎などの慢性感染症や、膠原病などの慢性炎症疾患が原因で起こる貧血は、炎症性貧血と呼ばれています。
体内で慢性的な炎症が起きているとき、細胞同士がこれを伝え合うための炎症性サイトカインという物質が増加します。これは、赤血球の生成を妨げるとともに、腎臓からのエリスポエチンの分泌も低下させます。さらに、慢性腎炎は小腸での鉄吸収を妨げると言われています。炎症性貧血の場合は、まず原因となっている病気を治療することが貧血解消の第一歩となります。

加齢に伴う貧血もあるため専門医を受診して早めの治療を

他にも、高齢者に多い貧血として、骨髄に原因がある貧血があります。例えば、再生不良性貧血は骨髄の中で血液細胞のもととなる造血細胞が減少する病気で、赤血球だけでなく、白血球や血小板などすべての血球が減ってしまいます。発症の原因は明らかになっていませんが、抗生剤や鎮痛剤などの薬物投与、ウイルス感染が引き金となる場合もあり、これらの原因を取り除くことで貧血症状が改善される可能性もあります。
骨髄の中に充分な造血細胞があるにもかかわらず、成熟した赤血球になる前に壊れて血液が上手く作られず、貧血が進む病気もあります。これは骨髄異型性症候群と呼ばれ、やがて白血球や血小板の生成にも異常を来します。骨髄異型性症候群は白血病に移行することが多く、根本的は治療には造血細胞の移植しかありません。高齢者に多く見られるという特徴も挙げられます。
胃の粘膜が萎縮して、内因子と呼ばれる糖たんぱく質が作られにくくなることで起こる貧血もあります。貝類などに多く含まれるビタミンB12は、血液を作るために不可欠な栄養素ですが、内因子がないと吸収されないという特徴をもっています。この貧血は巨赤芽球性貧血と呼ばれ、治療にはビタミンB12を投与し続ける必要があります。
他にも、肝硬変などの慢性肝臓疾患や甲状腺ホルモンの低下なども、高齢者にとっては貧血の原因となりなり得ます。貧血を引き起こす原因は非常に多いものの、血液検査ですぐに貧血の有無がわかるのも特徴です。また、怖い病気が隠れていることが多い一方で、加齢に伴って少しずつ腎臓からのエリスロポエチンが減少するなどしてて起こる、経度の老人性貧血もあります。この場合、とくに治療の必要はなく、定期的な経過観察で済みます。
まずは、異変を感じたら放置するなく、ただちに血液内科などの専門医を受診して原因を解消しましょう。

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